経理の仕事を始めたばかりで、どのように仕事をしていけば良いのか分からなくて困ったな。
経理部長として、経理初心者の指導をしていた経験もあるので、経理初心者が「デキル経理」になるために必要なことを話していくね。
経理の仕事が初めての場合、経理の仕事の基礎がわかる記事も参考にしてください☟
1.経理の仕事の目的を満たすこと
経理の仕事は、大きく2つに分けられます。
「資金業務」も経理の仕事とすると、経理の仕事は3つに分けられますが、財務の仕事という捉え方をする場合が多いので、今回は経理の仕事に含めません。
経理の仕事
- 「財務会計」:実績を数値化し、現状を把握する→情報を会社の外部に提供
- 「管理会計」:会社の将来の方向性を考える→情報を会社の内部に提供
会計情報を提供するのは、「財務会計」でも「管理会計」でも同じです。
ですが、会計情報を会社の外部(株主、取引先、銀行などの利害関係者)に提供するか、会社の内部(会社の経営陣など)に提供するかという大きな違いがあります。
「財務会計」と「管理会計」を比較すると、以下のようになります。
「財務会計」 | 「管理会計」 | |
プロセスの違い | 「過去会計」と言われる。
過去から現在までの取引をまとめることから。 プロセスは、「過去から現在へ」。 |
「未来会計」と言われる。
経営理念があり、具体的な経営目的を定め、計画を策定することから。 プロセスは、「未来から現在へ」。 |
情報提供先 | 株主、債権者、銀行、諸官庁 | 経営者、管理者 |
目的 | 法律に準拠した財務諸表を作成すること | 意思決定に有効な情報を得ること |
形式 | 財務諸表 | 利益計画、部門別損益、粗利分析など |
期間 | 半期、事業年度 | 日次、月次、四半期、半期、事業年度
また、1年から5年の未来の計画 |
「会計情報を正確にタイムリーに提供すること」に必要なのは、以下の通りです。
経理初心者にとっては、経理の仕事は「会計情報を提供すること」であり、経理の仕事の目的は、「会計情報を正確にタイムリーに提供すること」と理解しておけばよいでしょう。
会計情報を正確でタイムリーに提供するためにすべきこと
- 経理業務に必要な勉強をする(必要な知識は後述)。
- 関連部署と良い人間関係を築き、協力が得られるようにする。
- 顧問の会計士などと、コミュニケーションを密に取り、指導が得られやすくする。
- データや書類は、分かりやすく管理する。
- 業務に優先順位をつけ、進捗管理をし、スケジュール管理を徹底する。
経理の仕事に慣れてきたら、「会計情報を正確でタイムリーに提供すること」だけではなく、どのような情報が必要とされているのかを把握し、頼まれなくても自発的に必要な情報が提供できるようになりましょう。
2.経理の仕事の心構え
経理の仕事をしていく上で大切なのは、自分の仕事の立ち位置を随時確認し、ステップアップさせていくことです。
経理職というのは、「デキル経理」だと任されると、仕事の難易度がどんどん上がっていく、自分への評価がわかりやすい職種です。
最初は、会社の経理業務の一部だけ、しかも簡単な仕事しか任せてもらえません。
そこから、どこまで難しい仕事をたくさん任せてもらえるようになるかは、経理の仕事への向き合い方次第です。
任される仕事をステップアップさせていくために
- 自分に割り当てられた仕事を理解し、正確にこなせるようにする。
- 会社の経理業務の流れと全体像を把握する。
- 自分に割り当てられた仕事が、会社の経理業務のどのあたりなのか確認する。
- 日次業務ができるようになったら、月次決算、そして年次決算までこなせるようにする。
経理初心者かベテランかに関わらず、「デキル経理」として忘れてはいけない心構えも、大切だと思うので併せて書いておきます。
それは、「誠実であり、現場のことを理解し、論理的に判断すること」です。
この3つの重要性は、経理として働き続ける中で、実感することでしょう。
- 誠実でなければ、上司、同僚、他部署から信用されず、仕事がうまく進みません。
- 現場のことを理解しないと、自分が扱っている数字の意味が分からず、問題点を把握できません。
- 感覚ではなく、根拠(データや会計基準・法律)に基づき論理的に考えなくては、判断を誤ります。
どこの部下を見ていると、ミスや勘違いが多く、周りに信用されていない場合、この3つのどれかが足りていないことが多いです。
3.経理の仕事に必要な知識
経理担当者が身につける必要のある知識についても、見ていきましょう。
(1)簿記の知識
経理の仕事で必要な知識として、まず第一に挙げられるのは簿記の知識です。
簿記は、「仕訳」という経理の仕事に欠かせない「スキル」を身につけるために必要な知識です。
会計システムを使っている場合、簿記の知識がなくても仕訳ができるという声を聞きます。
取引がある程度定型化されているため、一から仕訳を入れなくても、金額や摘要の文言を変えるだけで済んでしまうからです。
ですが、簿記の知識がないと、定型化している仕訳以外に対応できませんし、経理の仕事が単なる作業になってしまい、自分が入力している仕訳の意味が理解できません。
ですので、最低でも日商簿記3級、できれば2級を取得して、基本的な知識は身につけておきたいです。
日商簿記検定以外の簿記に関する代表的な試験は、以下の通りです。
- 公認会計士
- 税理士
- 米国公認会計士(USCPA)
- FASS検定(経理・財務スキル検定)
- BATIC(国際会計検定)
(2)経理実務のための専門知識
「財務会計」という点で、経理の仕事を「根拠」を持って行うために、簿記以上の専門知識が必要となります。
特に、会計学の知識が必要でしょう。
中でも「企業会計原則」は、決算書が信用されるために従わなければならない原則であり、決算書作成の基本を理解するために頭に入れておきたいです。
市販の入門書で「会計のルール」を勉強しておくと安心でしょう。
ほか、「財務諸表等規則」、「会社法」、「金融商品取引法」、「法人税法」、「消費税法」などの知識も、経理の実務では必要です。
税法は頻繁に改正されますので、迅速に対応できるよう、日ごろから勉強しておくことが大切です。
(3)取引や経営理解のための知識
「管理会計」という点で、取引を理解するための知識、経営の観点からの知識も必要となります。
取引を理解するために、以下のような知識が必要です。
- ファイナンス
- コーポレートガバナンス
- 金融商品
また、経営の観点で考えるために、以下のような知識が必要です。
- 経営学
- マーケティング
- 生産管理
(4)国際財務報告基準(IFRS)の知識
国際財務報告基準(IFRS)というのは、世界共通の会計ルールです。
- 現在、IFRSが適用されている場合
- 将来、IFRSを適用することが考えられる場合
- 既に、海外子会社でIFRSが適用されている場合
このような場合、IFRSの内容の理解や、日本の会計基準とIFRSの違いを理解していることが大切となります。
国際財務報告基準(IFRS)については、以下の記事も参考にしてください☟
(5)Excelや英語のスキル
知識ではなくてスキルですが、Excelや英語も経理の仕事のために身につけておく必要があります。
特に、Excelの基本操作は、最低限できることが求められます。
最低限必要なExcelの機能は、以下の通りです。
- 基本の関数(足し算、引き算、掛け算、割り算など)
- IF関数(条件で処理結果を変える)
- Round関数(四捨五入、切り捨て、切り上げなどの表示)
- ピボットテーブル(データ集計や分析)
また、外資系企業ではなくても、ある程度の英語力が求められます。
通常、英語力はTOEICのスコアで判断されるので、公式問題集などでTOEICの勉強をすると良いでしょう。
経理の担当者が身につける必要がある知識
- 経理実務を行うため:簿記、会計学、税法の知識
- 取引を理解するため:ファイナンスやコーポレートガバナンスの知識
- 経営の観点から考えるため:経営学、マーケティングなどの知識
- 日本以外の会計基準(国際財務報告基準 IFRS)の知識
- Excelや英語のスキル
以上、「経理初心者のための「デキル経理」のなりかた」でした。
言われたことをただやるだけではなく、自分から積極的に提案したり、業務効率を上げるための改善に努めたりして、「デキル経理」になろうね。
経験と知識を積み上げたら、経理部長などへの昇進を狙ってもいいし、公認会計士、税理士、米国公認会計士(USCPA)などの資格を取って、会計の専門家として監査法人や会計事務所などに転職したり、独立・起業などの道も考えられるね。