2022年にUSCPA試験の内容が変更されると聞いたけど、何が変更されるのか知りたいな。
2022年の変更は、それほど大きくはないけど、ご質問をいただいたのでまとめておくね。
1.2022年のAUDの試験内容の変更
まず、AUDの試験内容の主な変更点から見ていきます。
2022年のAUDの試験内容の変更点
- SAS第134号~第142号:非公開企業の監査報告書の更新とそれに合わせた監査基準の修正
- SSARS第25号:レビューに適用される規則の一部を変更
- SSAE第21号と第22号:直接検証業務の追加に合わせた変更
AUDの試験内容の変更は、大きくは2つに分けられます。
(1)SAS第134号~第142号:非公開企業の監査報告書の更新とそれに合わせた監査基準の修正
非公開企業の監査報告書のフォーマットが変わりましたので、それに合わせて非公開企業(nonissuer)に関する監査基準(SAS)も変更となっています。
①SAS第134号:「監査人の報告と修正(財務諸表の監査における開示に対応する修正を含む)」
SAS第134号では、財務諸表に対する意見を表明する監査人の責任について記載されています。また、財務諸表の監査の結果として発行される監査報告書の形式と内容についても言及しています。
主な変更点は以下の通りです。
変更点
- エンゲージメントレターのサンプルの変更
- PCAOBの監査報告書(監査人の「意見」から始まり、「意見の根拠」が続く)と同様の順序に変更
- 「継続企業の前提」に実質的な疑義がある場合には、報告書に別の区分を設けること
- 報告書の「監査人の責任」を拡大すること
- 監査人が重要な監査事項(KAM:Key Audit Matter)を報告書(別区分)に記載すること
②SAS第135号:「監査基準に関するオムニバス・ステートメント」
SAS第135号は、監査基準委員会(Auditing Standards Board)のガイダンスとPCAOBのガイダンスをより緊密に連携させることを目的としています。
主な変更点は以下の通りです。
変更点
- 前任監査人に対し、関連当事者の関係や取引、および、重要な異常な取引に関して追加的な問い合わせを含むこと
- 経営者などに対し、重要な異常な取引に関して追加的な質問を含むこと
- 不正リスク要因の追加例を含むこと
- 関連当事者に関し、追加で実施すべき手続きを含むこと
③SAS第137号:「年次報告書に含まれるその他の情報に関する監査人の責任」
SAS第137号では、企業の年次報告書に含まれるその他の情報(財務情報、非財務情報を問わず、財務諸表とその監査報告書以外の情報)に関する監査人の責任について記載されています。
主な変更点は以下の通りです。
変更点
- 年次報告書に含まれるその他の情報に関する監査人の責任の明確化
- 年次報告書の定義の明確化
④SAS第138号:「重要性の概念の記述の改定」
SAS第138号は、AICPAプロフェッショナル・スタンダードのAU-Cの各セクションを修正し、AICPAプロフェッショナル・スタンダードで論じられている重要性の概念を、米国の司法制度やPCAOB、SEC、FASBの監査基準で使用されている重要性の記述と整合させるものです。
変更点は以下の通りです。
変更点
重要性の定義の改定
➄SAS第139号:「SAS第134号からの監査人報告の変更を反映したAU-C 800、805、810項の改定」
SAS第139号は、以下の3つの項目をSAS第134号「監査人の報告と修正(財務諸表の監査における開示に対応する修正を含む)」および最近発行された他のSASの報告規定と整合させるものです。
- 800項「特別な検討事項-特別な目的のフレームワークに従って作成された財務諸表の監査」
- 805項「特別な検討事項-単一の財務諸表および財務諸表の特定の要素、勘定、または項目の監査」
- 810項「要約財務諸表の報告に関する業務」
変更点は以下の通りです。
変更点
新しい監査報告書の構成に合わせ、特別目的フレームワークに関する報告要件を更新
⑥SAS第140号:「SAS第134号および137号から変更された監査人の報告を反映したAU-C 725、730、930、935、940項の改定」
SAS第140号は、SAS第134号「監査人の報告と修正(財務諸表の監査における開示に関する修正を含む)」および最近発行された他のSASの報告規定をGAASに適合させるものです。
また、AICPA Professional Standardsの他のAU-Cは、最新の改定以降に発生した実務上の問題を反映して改定され、AU-C 935「コンプライアンス監査」も政府の要求と整合するように改定されています。
変更点は以下の通りです。
変更点
- GAASの統合監査(財務監査と連動した内部統制の報告)の契約の報告要件の変更
- 中間税務情報のレビューの契約の報告要件の変更
- 政府コンプライアンス監査の契約の報告要件の変更
- 報告書の中で、その他の情報、補足情報、必須の補足情報の区分を分けること
⑦SAS第142号:「監査証拠」
SAS第142号は、十分かつ適切な監査証拠が入手できたかどうかを評価するために、情報の属性や要因を考慮することに主眼が置かれています。
監査人は、情報の入手先や入手手続きにかかわらず、監査証拠として利用する情報を評価することを前提にしています。
監査人が考慮すべき情報の新たな属性として、情報が経営者の主張の裏付けとなるか、矛盾するか、証拠の信憑性、情報の偏りやすさなどが挙げられています。
(2)SSARS第25号:財務諸表のレビューにおける重要性と不利益な結論
会計およびレビュー業務基準(SSARS)について、SSARS第25号「財務諸表のレビューにおける重要性と不利益な結論」では、「会計・レビューサービス基準に関する声明」に基づくレビューに適用される規則の一部を変更しています。
SSARS第25号は、以下の4つに関する改定が記載されています。
- 60項「会計サービス及びレビューサービスに関する基準書に準拠して実施される業務の一般原則」
- 70項「財務諸表の作成」
- 80項「コンピレーション業務」
- 90項「財務諸表のレビュー」
変更点は以下の通りです。
変更点
- 財務諸表全体の重要性を判断し、すべての重要な項目に対処するためのレビュー手続きを設計し、実施することが求められること
- レビュー業務において、不利益な結論を表明することを認めること
- レビュー報告書に、CPAが独立している旨を記載することを求めること
(3)SSAE第21号と第22号:直接検証業務の追加に合わせた変更
証明業務基準(SSAE)について、SSAE第21号の「直接検証業務」が追加されました。
AT-C第205号「アサーションに基づく検証業務」との整合性を保つため、SSAE第22号「レビュー業務」がAT-C第210号「レビュー業務」に取って代わりました。
①SSAE第21号「直接検証業務」
実務者は、「直接検証業務」と呼ばれる新しい業務をクライアントに対して行うことができるようになりました。
従来のアサーションに基づく検証業務を行う能力を維持しながら、この新しい業務により、さまざまな種類の非財務的主題を基準に従って測定または評価し、その結果を利用者に直接報告することができます。
②SSAE第22号「レビュー業務」
SSAE第21号「直接検証業務」に整合するよう、SSAE第22号「レビュー業務」が発行されました。
レビュー業務において実務者が行える手続きの種類が、より明確に記載されています。
レビュー業務での手続きの種類
- inquiry:質問
- analytical procedures:分析的手続
- inspection:実査
- confirmation:確認
- observation:観察
- recalculation:再計算
- reperformance:再実施
また、レビュー業務の報告書に、実務者が結論を出した根拠となる、実施した作業の情報的要約を含めることを要求しています。
さらに、SSARS第25号「財務諸表のレビューにおける重要性と不利益な結論」との整合性を取るため、反対意見を表明することを認めています。
2.2022年のFARの試験内容の変更
つぎに、FARの試験内容の変更点を見ていきます。
2022年のFARの試験内容の変更点
FASBのアップデート
- FASB ASU 2020-06
- FASB ASU 2021-04
- FASB ASU 2021-07
- FASB ASU 2021-09
- FASB ASU 2021-10
GASBの追加
- GASB Statement No.91
- GASB Statement No.94
- GASB Statement No.96
- GASB Statement No.98
FARの試験内容の変更は、大きくはFASBのアップデートとGASBの追加の2つに分けられます。
(1)FASBのアップデート
FASBの変更に関しては、FASB Codification の ASU(Accounting Standards Updates)を見ればどんな変更があるのか把握できます。
詳細については、ASUのリンクや予備校の教材を参照してください。
①FASB ASU 2020-06
負債ー転換権付負債およびその他のオプション(サブトピック470-20)および デリバティブとヘッジー企業の自己資本による契約(サブトピック815-40)
デリバティブとして会計処理することが要求されていない、または、資本金として処理される多額のプレミアムが発生しない転換特性を有する転換社債については、組み込まれた転換機能を本体の契約から分離する必要はありません。
②FASB ASU 2021-04
1株当たり利益(トピック260)、負債ー変更および消滅(サブトピック470-50)、報酬ー株式報酬(トピック718)、デリバティブおよびヘッジー企業の自己資本の契約(サブトピック815-40)
独立資本クラスのコール・オプションの修正または交換のうち、修正または交換後も資本クラスに分類されるものについての会計処理を明確化し、実務上の多様性を低減します。
③FASB ASU 2021-07
非上場会社は、従業員および非従業員の両方に対して発行された株式報酬について、合理的な評価方法を適用して、現在の価格を決定することができます。
④FASB ASU 2021-09
公営企業でない借手は、割引率として、企業全体ではなく、アセットクラスレベルでリスクフリーレートを使用することを選択できるようになりました。
個々のリースについて、リースに内在する利率が容易に決定できる場合、借手は、リスクフリーレートや追加借入率ではなく、その利率を使用する必要があります。
➄FASB ASU 2021‐10
会計モデルを適用し会計処理される政府との取引に関し、年次開示を要求しています。
(2)GASBの追加
GASBに関しても、詳細については、GASB Statementのリンクや予備校の教材を参照してください。
①GASB Statement No.91
発行者による導管性債務を報告する単一の方法を提供しています。
(1)発行者がおこなったコミットメント、(2)導管性債務に関連する取り決め、(3)関連する注記開示に関連する実務の多様性を排除しています。
②GASB Statement No.94
官民および公共のパートナーシップの取り決め(PPPs)に関連する問題を取り扱うことに寄り、財務報告を改善します。
PPPsとは、政府が事業者(政府機関または非政府機関)と契約し、インフラやその他の資本資産などの非金融資産を運営・使用する権利の支配権を交換などにより一定期間譲渡し、公共サービスを提供する取り決めです。
③GASB Statement No.96
政府のエンドユーザーに対する利用権に基づく情報技術の取り決め(SBITA) の会計処理と財務報告に関する指針です。
(1)SBITAの定義、(2)SBITAが使用権資産(無形資産)とそれに対応する使用権負債をもたらすこと、(3)SBITAの導入費用を含む使用権支払い以外の支出に関する資産化基準、(4)SBITAに関する注記情報の開示を求めています。
④GASB Statement No.98
年次包括財務報告書という用語とその頭文字であるACFRを制定しています。
この新しい用語と略語は、州および地方公共団体の会計基準における「包括的年次財務報告書」とその略語に代わるものです。
「包括的年次財務報告書」の頭文字の一般的な発音が、極めて好ましくない人種差別のように聞こえるという関係者からの懸念に応えて作成されました。
3.2022年のREGの試験内容の変更
さらに、REGの試験内容の主な変更点を見てきます。
2021年で、以下のような一時的な税制上の規定が失効するため、それ以前の規定が再び適用となります。
2022年のREGの試験内容の変更点
- Consolidated Appropriations Act(包括予算割当法案)に関する一時的な規定が失効
- American Rescue Plan Act(米国救済計画法)に関する一時的な規定が失効
REGの試験内容の変更も、大きくは2つに分けられます。
(1)Consolidated Appropriations Act(包括予算割当法案)に関する一時的な規定が失効
Consolidated Appropriations Act(包括予算割当法案)における、「慈善寄付金の制限の一時停止」に関して、一時的な規定が失効となります。
この「事前寄付金の制限の一時停止」ですが、以下のようなものでした。
納税者がSchedule A上で項目別控除として控除できる慈善現金寄付の額は、納税者の調整後総所得(AGI)の一定割合(通常は60%)に制限されています(ただし、適格寄付金はこの制限を受けません)。
個人は、調整後総所得の100%まで適格寄付金を控除することができることになりました。
また、法人は、課税所得の25%まで適格寄付金を控除できることになりました(この金額を超える寄付金は、次の課税年度に繰り越すことができます)。
控除の対象となるのは、以下の条件を満たす寄付金です。
控除の対象となる寄付
- 現金での寄付
- 適格な組織に対する寄付
- 2020年に行われた寄付
現金以外の財産を寄付した場合は、この救済措置の対象にはならず、通常の限度額の範囲内で控除を受けることができます。
変更点
- 個人の場合:「100%の慈善寄付限度額」の失効
- 法人の場合:「ATI(修正後課税所得)の慈善寄付限度額の25%」の失効
(2)American Rescue Plan Act (米国救済計画法)に関する一時的な規定が失効
American Rescue Plan Act (米国救済計画法:COVID-19 Stimulus Package)について、変更があります。
このAmerican Rescue Plan Act(米国救済計画法)ですが、大恐慌以来最大の経済対策の1つとされる大規模なもので、アメリカ国民に直接的な救済策を提供し、アメリカ経済を救い、ウイルスに打ち勝つためのプランです。
内容としては、アメリカ国民への直接給付、連邦失業給付の延長、ワクチン配布、中小企業などの救済、子供の貧困対策などです。
変更点
- 児童税控除額:「18歳未満の児童1人につき3,000ドル、6歳未満の児童1人につき3,600ドルに引き上げ」の失効
- 子供および扶養家族のための税額控除:「子供1人の場合は4,000ドル、2人以上の場合は8,000ドルに引き上げ」の失効
- 雇用者による扶養控除額:「10,500ドルに引き上げ」の失効
まとめ:2022年のUSCPA試験内容の変更について
2022年のUSCPA試験内容の変更について見てきました。
AUD・FAR・REGで変更があり、BECは変更はありません。
AUDの変更が比較的大きいです。
非公開企業の監査報告書について変更がなされますが、今までの監査報告書とは全く異なり、公開企業の報告書と非常によく似たものとなります。
最初のセクションに監査意見が記載され、次に意見の根拠が記載されます。
また、監査報告書の中で、Key Audit Matter(重要な監査事項)を報告するというアイデアが新たに採用されています。
監査人がKey Audit Matter(重要な監査事項)を報告するように依頼されている場合、Key Audit Matter(重要な監査事項)のセクションは、意見の根拠のセクションのすぐ後になります。
非公開企業の監査報告書のセクション
- 意見(Opinion)
- 意見の根拠(Basis for Opinion)
- 重要な監査事項(Key Audit Matter)
AUDについては色々と変更がありますが、変更点は、AUDのBlueprintのContent Areaとしては、Ⅰの「Ethics, Professional Responsibilities, and General Principles」とⅣの「Forming Conclusions and Reporting」だけです。
大事なContent Areaは、Ⅱの「Assessing Risk and Developing a Planned Response」とⅢの「Performaing Further Procedures and Obtaining Evidence」です。
よって、変更点は、そこまで重要性は高くないと理解しています。
以上、「【2022年】USCPA試験内容の変更を解説!AUD・FAR・REGで変更あり」でした。
AUDに関する変更が多いと思ってよさそうだね。
影響が大きいのはAUDで、非公開企業の報告書が変わるから、それに関連して色々と変更されるね。
2022年以降にAUDを受験する際は、この点に注意してね。