AICPAのBlueprints(ブループリント)を読んだけど「Skill Level」というのがいまいちピンとこなかったよ。
いったい何なのか知りたいよ。
Blueprints(ブループリント)に書かれている「スキルレベル(Skill Level)」は、効果的にUSCPAの学習を進めていくために、理解しておくといいね。
スキルレベルについて詳しく解説していくよ。
Blueprintsの詳細は、こちらを参考にしてください。
USCPA試験については、どこの著書『USCPA(米国公認会計士)になりたいと思ったら読む本』も参考にしてくださいね。
USCPA短期合格のコツも記載しています。
USCPAの勉強を始めていない場合は「USCPAの始めかた」も参考にしてください。
1.Blueprintsのスキルレベル(Skill Level)とは?
「Blueprints(ブループリント)」を読んだことがある方なら、スキルレベル(Skill Level)が記載されていることはご存知でしょう。
「Blueprints」について少し説明をしておきますが、AICPA(米国公認会計士協会)が、USCPA受験生のために提供している受験サポートの資料です。
USCPA試験は、「Blueprints」という設計図を基に作成されます。
「Blueprints」を読むと、USCPA試験には、どんなタスクが、どのくらいの量、どのくらいの高さのスキルレベル(Skill Level)で出題されるのかが分かります。
(1)「Blueprints」のスキルレベルは4つ
「Blueprints」では、どのくらいの高さのスキルが必要なのか、4つのスキルレベル(Skill Level)で表されています。
スキルレベル(和訳):上に行くほど高いスキルレベル
- 「Evaluation(評価)」:問題を検討または評価し、判断して結論を出す。
- 「Analysis(分析)」:原因を特定し、推論を裏付ける証拠を見つけるため、別々の分野の相互関係を調査、研究する。
- 「Application(応用)」:知識・概念・技術を使用、あるいは実証する。
- 「Remembering and Understanding(記憶と理解)」:得た知識を活かし、ある分野の重要性を認識し、理解する。
(2)なぜスキルレベルを理解する必要があるのか
なぜスキルレベル(Skill Level)を理解する必要があるのでしょうか。
スキルレベル(Skill Level)を理解する必要があるのは、スキルレベルと出題形式には関係があるからです。
スキルレベルと出題形式の関係
- 「Remembering and Understanding(記憶と理解)」:MC問題で出題
- 「Application(応用)」:MC問題かTBS問題のどちらかで出題(
WC問題とリサーチ問題も含む) - 「Analysis(分析)」と「Evaluation(評価)」:ほとんどTBS問題で出題
また、どの科目で、どのスキルレベルが、どのくらい必要なのかが分かります。
2024年1月からの新USCPA試験の「Blueprints」によれば、各科目のスキルレベルの割合は以下の通りです。
たとえば、AUDのみ、一番高いスキルレベルである「Evaluation(評価)」が、5%から15%あることが分かります。
ISCは、一番低いスキルレベルである「Remembering and Understanding(記憶と理解)」が55%から65%あることがわかります。
つまり、USCPA試験を受ける上で、どの程度の高さのスキルが求められているのか知り、対策を立てるために、スキルレベルを理解しておく必要があります。
(3)「HOTS(高次な思考スキル)」が求められるように
USCPA試験で試されるのは、「HOTS:Higher Order Thinking Skills(高次な思考スキル)」です。
「Higher Order Thinking Skills(高次な思考スキル):HOTS」というのは、問題の背後にある「何」ではなく、「なぜ」「どのように」を見極めることを指します。
日本では、「上位思考スキル」などとも訳され、頭文字を取って「ホッツ」と呼ばれています。
USCPA試験では、受験生に対して、問題に答えるために自分の知識をどのように応用しているか試しています。
テクノロジーの進歩により、新人のCPAは、キャリアの早い段階で、より高度なレベルのパフォーマンスを期待されるようになりました。
そのような状況を受けて、2017年以降から、この「HOTS:Higher Order Thinking Skills(高次な思考スキル)」がテストされるようになったのです。
2.「HOTS(高次な思考スキル)」の認識を持つ
「HOTS:Higher Order Thinking Skills(高次な思考スキル)」について、さらに詳しく見ていきます。
これが分からないと、「Blueprints」の「Skill Level(スキルレベル)」を見ても、結局何なのか理解できないからです。
(1)「HOTS(高次な思考スキル)」の起源:ブルームの「教育目標分類法」
「HOTS(高次スキル)」は、「教育目標分類法(Bloom’s Taxonomy of Educational Objectives)」から来ています。
「教育目標分類法」は、ベンジャミン・ブルーム(Benjamin Bloom)によって開発されたモデルです。
参照先:Bloom’s Taxonomy
人が新しい情報をどのように理解し学ぶかについて、階層に分けて、教育目標を分類しています。
ブルームの「教育目標分類法」は、2020年度の教育改革にて、AI時代の教育指標としてかなり参考にされましたので、ご存知の方も多いと思います。
「知識を覚えるだけではダメ」ということで、「どうなったら、知識以上のことを学べたといえるのか」が、ブルームの「教育目標分類法」で整理されています。
ブルームの「教育目標分類法」
- Create(創造する):物事を組み合わせて、新たなものを作り出す
- Evaluate(評価する):価値に関する評価をくだす
- Analyze(分析する):情報や概念を各部分に分解して、理解を深める
- Apply(応用する):情報や概念を別の状況で使う
- Understand(理解する):意味を理解し、内容を言い換える
- Remember(記憶する):情報を想起する
情報が吸収され理解される階層は、下から上へと進みます。
「Remember(記憶する)」ことから始まり、「Create(創造する)」ことで終わります。
既にご説明をしたUSCPA試験の4つのスキルレベルは、ブルームの「教育目標分類法」に基づいていることが分かりますね。
USCPA試験の4つのスキルレベル
- Evaluation(評価)
- Analysis(分析)
- Application(応用)
- Remembering and Understanding(記憶と理解)
AICPAはブルームのモデルを利用して、CPA受験者の学習目標を導き出し、試験問題の作成に役立てています。
(2)ブルームの「教育目標分類法」からスキルレベルを理解する
USCPA試験の4つのスキルレベルを理解したかったら、ブルームの「教育目標分類法」を理解すればよいということですね。
ブルームの「教育目標分類法」では、「Remember(記憶する)」→「Understand(理解する)」→「Apply(応用する)」→「Analyze(分析する)」→「Evaluate(評価する)」→「Create(創造する)」と6つに階層を分けました。
考える力のステップ
下位思考スキル(Lower Order Thinking Skills: LOTS)
- Remember(記憶する)
- Understand(理解する)
- Apply(応用する)
上位思考スキル(Highter Order Thinking Skills: HOTS)
- Analyze(分析する)
- Evaluate(評価する)
- Create(創造する)
ただし、Apply(応用する)は、上位思考スキルだという説と、下位思考スキルだという説の2つがあります。
これは、考える力のステップを表しています。
最初の3つのステップは下位思考スキル(Lower Order Thinking Skills)でLOTSと呼び、その後のステップは上位思考スキル(Highter Order Thinking Skills)で HOTSと呼ばれています。
下位思考の積み重ねで、上位思考ができるようになります。
ですので、下位思考より上位思考の方が優れているというわけではなく、単に考える力のステージの違いです。
下位思考スキルは、考える力の基礎的なスキルです。
上位思考スキルは、物ごとや、聞かれたことに対して、より複雑な判断、批判的思考、能動的な関わりが必要となるスキルです。
USCPA試験のスキルレベルと出題形式の関係を見ると分かりますが、下位思考スキルが必要なものはMCで出題され、上位思考スキルが必要な物はTBSで出題されています。
スキルレベルと出題形式の関係
- 「Remembering and Understanding(記憶と理解)」:MC問題で出題☜下位思考スキル
- 「Application(応用)」:MC問題かTBS問題のどちらかで出題☜上位思考スキルまたは下位思考スキル
- 「Analysis(分析)」と「Evaluation(評価)」:ほとんどTBS問題で出題☜上位思考スキル
Application(応用)は、上位思考スキルと下位思考スキルのどちらの説もありますが、USCPA試験でもMC問題かTBSのどちらでも出題されます。
Application(応用)がちょうど境目になるという点が、ブルームのモデルと同じですね。
(3)USCPA試験の学習は「HOTS(高度な思考スキル)」を意識する
USCPA試験の学習をする際は、「HOTS(高度な思考スキル)」を意識し、「HOTS(高度な思考スキル)」の学習方法を取り入れるといいのかと思います。
「HOTS(高度な思考スキル)」の学習方法とは、思考スキルの発達のステップに従って、段階的に「考える力」を伸ばしていくことを指します。
ブルームの「教育目標分類法」から分かるのは、単に勉強を続けていけば、いつの間にか身につくのではないということです。
意図的に計画をして、段階的に「考える力」を伸ばさないといけないということです。
そして、「記憶」「理解」「応用」で終わらず、さらにその先の「分析」「評価」「創造」が求められるということです。
USCPA試験では、「評価」はAUDでしか求められませんし、「創造」はAUDでも求められませんが。
たとえば、AUDの虚偽表示については、「Evaluation(評価)」のスキルレベルまで求められます。
虚偽表示の概念や定義を「覚え」て、虚偽表示のパターンを「理解」し、修正済の虚偽表示と未修正の虚偽表示の一覧作成に「適応」できるようになる。
ここまでが基本。
さらに、未修正の虚偽表示が企業の財務諸表に及ぼす影響を「判断」し、財務諸表の重要な虚偽表示のリスクに対する内部統制の不備の重要性を「評価」する、といったことができるようになる必要があるということでしょう。
特にAUDは、高いスキルレベルが求められますよね。
また、BECのWC問題は、「Application(応用)」のスキルレベルです(新試験ではBECはなくなりましたので注意)。
WC問題のライティングは、どれだけよく覚えているかを示すのが目的ではないでしょう。
それなら、MC問題だけで十分です。
とはいえ、「Analysis(分析)」や「Evaluation(評価)」のスキルレベルまで求めていないのも、ポイントかと思います。
自分の持っている知識から、相手の質問に応えられそうな策を引っ張り出し(想起し)、相手を納得させるよう状況に適用する能力があるかを示すのが目的と言えるでしょう。
目の前の事象に適用するのが「Application(応用)」のスキルレベルですので。
ちょうど、お医者さんが、患者さんを診察して、病気に関する知識や症例などから、この患者さんの病名を推測して、症状に合った薬を出すような感じでしょうか。
よって、WC問題対策として、単に知識を詰め込もうとするのはダメでしょう。
何か概念を覚えたら、どういうことなのか噛み砕いて説明できるようになり、実務で起こりうる状況ではどのように適用できるのかを考える必要があるでしょう。
WC問題は、たとえ書いていることが間違っていても、提案、理由、結論が理論的に提示しているなら点がもらえると言われていますが、きっとこのためだと思います。
BECは色々なトピックがありますが、BECは考えるための材料を蓄積する科目なのかと思います。
BECという科目でインプットした知識が土台となるので、USCPAになってから実務の現場でも応用し、分析して自分の考えが導き出せるようになるのだと思います。
なぜUSCPA試験でこのようなことが聞かれるのか、どんな場面でこの知識が役に立つのかを考えると勉強が立体的になるのかと思います。
「USCPA予備校のテキストに書いてあることを覚える」という勉強では、下位思考スキルで止まっています。
「テキストの知識を実務でどう活かせるのか(将来の)実体験につなげる」「テキストの別々のページ、別の教科に出てくる知識と知識をつなげる」といった上位思考スキルが必要ということではないでしょうか。
どこは、受験生だったとき、アビタスの受講生たちと、授業の後に飲みに行って一緒に勉強をしていましたが、単に黙々と問題を解いていたのではありません。
「今日の授業に出てきたアレって、FARでもAUDでも出てきたよね。
あのページとこのページにも書かれていたし、MC問題でもFARだとこう聞かれたけど、AUDだとこう聞かれるよね。
出てきたページに、全部同じ色の付箋をつけておこう」
「ここの説明がよくわからなかったけど、こういうことかな。
言い換えると、こうなるよね。
大事だけど間違えやすいから、問題にされそうだよね」
このように、受講生同士で話すことで、気づきやつながりが見つかったり、知識や出題の理解が深まっていました。
どこが受験生だった頃は、4科目一気に勉強をして、一度に受験することも珍しくなかったので、USCPA試験の全体像を把握しやすかったのかもしれませんが。
今は、幸運なことに1科目ずつの受験がしやすいので、不幸なことに気づきが減ってしまうのかもしれません。
USCPAの試験では、4つの科目に分けて出題されますが、当たり前ですが、実務ではそのような括りや区別はありません。
有機的なつながりを意識しながら学習をする必要があると思いますし、そうすることで理解が深まり、強引に暗記する必要がなくなってくると思います。
AICPAのBlueprintsを読んでいると、AICPAの出題者としての気持ちが伝わってきます。
USCPA試験を受けるのでしたら、AICPAの意図が分かっている必要があると思いましたので、その中でも大事だと思ったスキルレベルについてまとめました。
スキルレベルをしっかりと理解することが、USCPA試験の学習を効果的にするコツかと思っています。
以上、「USCPAのBlueprintsのスキルレベル(Skill Level)とは?効果的な学習で必須!」でした。
「スキルレベル」は、ブルームの「教育目標分類法」に基づいているんだね。
「なんとなくMC問題を回していけば、自然と合格点が取れるだけのレベルになる」と思っていたら、その考えは捨てた方がいいだろうね。
USCPA試験の学習を効果的に進めるヒントが分かったかな。
USCPA試験については、どこの著書『USCPA(米国公認会計士)になりたいと思ったら読む本』も参考にしてくださいね。
USCPA短期合格のコツも記載しています。
まだUSCPAの勉強を始めていない場合は「USCPAの始めかた」も参考にしてください。